青宮ゲミ日記

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「居場所」と心の健康【社会的居場所としてのサードプレイス】(4)

社会的居場所としてのサードプレイス

最初にOldenburg(1989)による「サードプレイス」の定義と特徴を示す。彼によると、家庭(ファーストプレイス)と職場・学校(セカンドプレイス)は私たちの生活のメインステージだが、精神的健康や人生の充実のために、日常の役割や義務から自由になれる空間(サードプレイス)が必要という。Oldenburgはサードプレイスの具体例として、カフェ、パブ、バー、美容院、書店、ビリヤード場などを挙げる。彼はサードプレイスとして、他者との交流を伴う「社会的居場所」のみを取り上げている。とはいえ、家庭・職場以外の重要な場として、他者との交流を伴わない「個人的居場所」もサードプレイスとして扱う。

 

定義 : サードプレイスとは、家庭および職場ではない、定期的・自発的で非公式な楽しみのための集いの場を提供する、様々な公共空間の総称である。

 

特徴 : 多様な属性の人々と交流できる。/社会的地位・肩書きに関係なく対等な関係性。/会話が主な活動である。/時間的・地理的にアクセスしやすい。/遊び心のある雰囲気。/良い家庭に似た、精神的な心地よさ。/常連の存在が、場の雰囲気づくりや新参者の受け入れに、重要な役割を果たす。/ストレスの解消、知的刺激、心の癒しが得られる。/地域コミュニティの民主主義を活性化する。

 

 

·ストレスの解消、所属欲求の充足

社会的居場所としてのサードプレイスは、人々との会話によるストレスの発散、気分転換をもたらす。また繰り返し通ううちに人間関係の深まりや場ーの愛着が生まれ、所属欲求·尊重の欲求が充足される。サードプレイスのこうした要素が、メンタルヘルスや幸福感を促進すると考えられる。サードプレイスが社会的居場所となる要件として、商品、物理的環境、活動内容の持つ魅力に加えて、場に集力人々との安心感を伴う交流が重要になる。バプやカフエ以外にも、多様な地域の場所や活動がサードプレイスとなる。

 

·ソーシヤルサポート

地域コミュニティでは、カウンセリングや精神医療という公的な精神衛生活動の他、人々による非公式のメンタルヘルス支援が行われる。そうしたサポート資源として、パーテンダー、美容師、占い師などがある。臨床心理学者の堪谷(1987)は、酒場のマスターが行う非公式な相談活動に注目した。堪谷がフィールド調査をした酒場のマスターは、友人が多く博識な人物であり、1日に数人の客から不平や個人的な悩みを打ち明けられていた。このマスターは心理学や精神医学の知識はないが、主に傾聴共感による支援を行っており、専門家から見ても有能な援助者であった。また近年は自殺予防の見地から、地域コミーニテイの非専門家による「ゲートキーパー」の役割が重視され、研修や啓発が行われている。自殺リスタの高い人を早期に発見·支援するとともに、専門家ーの橋渡しが期待される。こうしたゲートキーパーとして、かかりつけ医、教職員、保健師、看護師、ケアマネージヤー、児童委員、理·美容師などが挙げられる。サードプレイスで出会う人々も、自殺予防のみならず、孤立や不適応に陥るのを防ぐゲートキーパーの役割を期待されよう。

 

・自己実現欲求の充足

自己実現の欲求は、社会の中で自分の能力を十分に発揮し、生きがいある生活を送ることを志向する社会的居場所としてのサードプレイは、家庭や職場では持てない新しい役割を獲得一自己実現を可能にする。例えば、同好の仲間と音楽やスポーツなどの趣味を楽しんだり、ボランティアなどのさまざまな社会貢献活動を行うことが挙げられる。

 

・社会的居場所としての「文化圏」

社会的居場所としてのサードプレイスとして特定の年齢屠、趣味・志向を特つ人々を引き寄せ、相互交流を生み出す「文化園(カルチャー)」は意義があろう。社会教育学者の筒(2002)は、さまざまなメディアを通して生活空間に運ばれる「サブカルチャー」が、若者の自己形成に大きな影響を与えることを論じた。こうしたサブカルチャーが現代のコミュニティ形成に関わり、「自己形成空間」としての「居場所」を提供する。そうした文化園として「コミケ文化圏」「ゲーセン文化園」「ネツト文化圏」「ストリート文化園」「クラブ文化圏」「ギャル文化圏」「サークル文化園」がある。

 

 

次回は「居場所」と心の健康【個人的居場所としてのサードプレイス】(5)でお会いしましょう!